【vol.52『実樹のドZINE』】- 実樹(東京萬天堂)- 性感マッサージ

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実樹の写メ日記

  • vol.52『実樹のドZINE』
    実樹
    vol.52『実樹のドZINE』

    vol.52『実樹のドZINE』



     



    バレンタインを、終えて。



     



    初めての"本命のチョコ"は人生初の彼女からもらった犬の形をしたヤツが6匹入ったの。



    なぜか彼女の親友からも同じチョコを同時にもらった。きっと一人であげるのが恥ずかしいみたいな中学生特有の謎の方向への照れが発動したんだと思う。



    彼女からもらった犬のチョコのうちの3匹の首をかじって、ひっつけて「ケルベロス!」とボケたら、彼女はちょい怒りながら呆れてたけど彼女の親友はやたらゲラゲラ笑っていた。



    あの異様な笑い方は絶対、当時の僕の彼女に対するその子の中の(あんた、こんな愚かな男子になに初恋を捧げてんのw)って感じの良くない感情だった気がする。



    もう連絡とってないけど、あの二人は大人になった今、友達じゃないだろうな。



     



    高校の頃の片思いの相手から貰ったバレンタインの方が印象的だったりする。



    学生時代の僕は正直かなりの数の義理チョコをもらうタイプだった(生意気めんご)



    言い訳がある。いや言い訳?別にいいでしょ。



    まぁ、いいや、ごほん。



    考察がある。



    ワンクッションの男。



    きっと、本命の男子のための練習、…ジェネリック系男子として機能したり、特に恋とかないけどなんとなくのバレンタインの周囲の空気に流されて生まれ行き場なく漂うエネルギーをぶつける相手としてマジでちょうどよかったんだろう。



    鈍感なところもあるので気付いてなかった本命のKIMOCHIが紛れていた…と、信じたい(ごめん、正直、バレンタインに後輩の子に告白されたことだってあるけど、充実してた部分より孤独だった部分を君と共有したくてちょっとそっちは隠してた)



     



    それはそうと、人知れず淡い恋心を抱いていた僕は、その流れで意中の相手から貰うチョコレートを楽しみにしていた。



    磐石の運び、軌跡の奇跡、女友達に「手作りしたの〜」と言いつつ配り終えたその子は「次は男子ー!」と、まず僕にくれた。



    めちゃくちゃ嬉しかった。



    ビニールの包装に包まれたなんかスポンジにチョコがコーティングされてるようなやつ。



    トリュフとかガトーショコラとかあらゆる固有名詞をバレンタインで覚えたけど、このお菓子は見たことがない。



    「これはなんていうの?」と聞いたら「とくになにってことはない」と返事がきた。



    全ての食物に名前がついてる訳ではない。



    オリジナリティ、独創的、全てがよくみえる。



    とはいえ味を予想。ドーナツみたいな感じかな?とかね。



    目の前で食べてと言われたので食べた。



    「美味しい?不味い?」



    とか言われるけど、その前に、固てぇ。マジで固てぇ。



    ゲキ落ちくんの最後の方みたいなギュッと感。



    かろうじて食べ物に照合すると、食感としてはサーターアンダギーが一番近い。



    その子と沖縄はなんの縁もゆかりもない。



    サーターアンダギーに味のしないピンク色の液体がコーティングされて、ゴホゴホとむせやすいように白い粉がまぶしてあった。



    感想を求められて、つい「なんくるないさ」と答えてしまいそうになるほどサーターアンダギー。



    気持ちとしては「なんくるなくないさ」なんだけど、それが最早沖縄弁として正しいかどうかわからない。



     



    「美味しいよ」という嘘と「飲み物欲しくなる」という必死に(完璧じゃないよ、でもそこが最高なんだよ)って意味の本音を伝える。



     



    「よかった」と他の男子に配ろうとするその子の姿に、僕はちょっと不安を感じていた。



    心ない誰か、空気の読めない誰かが、グサグサとネガティヴな棘として刺さる一言を投げたりしないだろうか。



    でも、思春期って未熟さが両肩を抑えてしまって、教室という社会でその子を守る気概のない僕は、その子が傷つく瞬間に出くわしたとて、なにかしてあげられる自信が無かったから、そっと教室を離れた。



    後悔だ。今だったら、力になるかならないかわからずとも、その場にはいれるのに。



     



    なにしたか全く覚えてないけど、フラフラと他の教室か違う学年の廊下かどっかしらで時間を潰した。



    おそらく柔らかくてすげーうまいチョコを食ってたのかも知れない。



    暫く経って教室に戻ると、予想は的中して、どことなくその子がシュンとしていた。



    どこまでクッションがわりのユーモアが混ぜられてた知らんが、きっと誰かが「美味しくない」とメッセージを発信したんだろう。



    なんくるなってないサーターアンダギーもめちゃくちゃ余ってる。



     



    僕はその子の席に近づいて「弟に兄としての威厳を保つために数のかさましが必要だから余ってるんだったら頂戴」と告げた。



    「いいよ」と返事をもらい、5〜6個くらいもらった。



    その子にとって、それが嬉しかったかどうかは分からないけど、うまくいかなかった自分のチョコレートが無くなって清々したような表情を見せてくれたような記憶がある。



    嬉しいとかじゃなくて、僕の目の前で清々してた。



    この僕の気遣いに気づいてくれてたかどうか答え合わせをしたことはないし、することもない。



    若くしてその子は事故で亡くなってしまった。



     



    家に持ち帰ったサーターアンダギーを弟が食べて「固っ!」って言ってた。



    その時に「そんなこと言うなよ」じゃなくて「だよな!」って兄弟で盛り上がる方に持っていってしまったことはマジで反省。



    大人になって焼肉を食べながら、バレンタインデーの時にやたら固いチョコのケーキみたいなやつを食べたことを弟は覚えていたから、あの固さはきっとかなりヤバかったんだと思う。



     



    ま、バレンタインデーなんていつかのエッチのための前戯ですわ、前戯。



    ちょっと糖分のある前戯。



     



    マジでエロスは最高!



    大好き!



     



    スーパーボウルのハーフタイムショー観た?



    なんか上がった〜✨



     



    見たら無条件に気分が上がるもの。



    あるよね。



    野良猫かと思ったらなんかイタチみたいな?ハクビシンっての?あれ見たらテンション無条件に上がっちゃうね。



    意外と東京にいんだな、これが。



     



    道の邪魔なところに停まった車の中にがんこちゃんのキーホルダーがぶら下がってたり、よちよち歩きの男の子が横断歩道の途中で顔面からずりこけたのに、ノーリアクションですたすた歩き始めたり、浮世での些細な面白い物事は積み重なる一方だから、あの世にいったときに先に楽しんでる人とたくさん話したい。



     



    うわ、めっちゃ日記っぽい。



    どうした実樹。



    まぁ、でも日記も前戯や。



    安心して服脱いでもろて。



    横になって待っちょれ。



     



    エロスは最高!



    君と僕が生きてる証、快楽のぶんだけ生まれたことが祝福されてるのとおんなじ。



     



    【東京/横浜萬天堂】実樹/みき



    Twitter @miki_mantendo






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