vol.5『実樹のドZINE』
明日は冷えるから気をつけて。
風邪ひかないでね。
路上で「かわいいワンちゃんのいる犬カフェはいかがすか〜?」と呼び込むお姉さん。
ワンちゃんと言いながら営業形態の名前は『犬カフェ』という響きにちょっとした畜生感を覚えてしまった。
『ワンちゃんカフェ』で世の中的に通すことは無理だったのだろうか。
子供の頃は近所の友達の家の凶暴なダックスフンドに悩まされていた。
犬種的に穏やかであって欲しかったのに、あの長い胴をブンブン振り回してお尻をかじってくるのだ。
「ダメ!こら!ステイ!」と叫ぶ飼い主の友達の言うこともてんで聞きやしない。
日本の犬なのに「待て」じゃなくて「ステイ」って言ってるからじゃないの?と喉ちんこまで出かけたけど、疎遠になるまで言えなかった。
誰が飼ってるかわからない柴の野良犬のほうが言うことをおとなしかった。お手とかしてくれたし。
その柴と子供の時に分け合って食べてたチーカマが人生最高のチーカマだ。
美味かった。
どんどん世の中が整備されて『野良』って言葉を最近聞かなくなった気がする。
管理されていない存在に対する表現として、すごく好きだから、もっと使われてほしい。
『野良心』とかそういう類に使ってもいい。
心持ちだけでもふらっと野良でいれたら、すごく落ち着くはず。
僕は自由を勝ち得たいというより、支配から逃げているように、明日を見えなくしている。
明日がない人間の価値は映画『俺たちに明日はない』のボニーとクライドが教えてくれた。
なくったって美しい。
絶対に明日があることを維持しようと無理に頑張る必要はないよ。
ふいに出た思いやりの一言は一番自分が言ってほしい言葉でもあるんじゃないかと思ってる。
僕もよく何かしら優しい言葉を口に出しながら、ふと一人、見慣れた天井を見上げて「あーさっきのは僕が欲してる優しさか」と気づく時がある。
オブラートに包まないSOSは発信しづらい。
ネガティブな状態を現す言語が増えてしまって、嫌な感じでカテゴライズされてしまうのもきっと怖い。
辛いことを言うことに怯えてしまわなければいけないなんて…社会つらすぎ。
それとなく隠された君のよくない状態に僕は気付きたい。
よこしまな僕は。
「性欲が爆発してる」「ウズウズする」こんなSOSは平気で言ってくれる仲で在りたいものである。
その心躍る危険信号には「S、最高!」「O、おいで!」「S、しよう!」と返したい。
最高!おいで!しよう!
S!O!S!ヒィーアッ!
Netflixの「浅草キッド」の宣伝(泣いちゃった)が街に溢れている中で導かれるように浅草寺でおみくじを引いた。
もしも君が気持ちのグジュグジュした状態ならば迂闊に浅草寺に手を出しちゃあならない。
浅草寺のおみくじはやたら『凶』を引いてしまうことを君は知ってるか?
寺や神社もきっと商売、僕はおみくじ引いてくれた人が気持ちよくなるようにとお坊さんや神主さんが細工してると思っている。
が。
浅草寺は30%が『凶』なんだ。
社会の無慈悲さをしっかりとおみくじに反映して"どうぶつの森"の世界に人々が逃げ込むように貢献している。
浅草寺は任天堂の手先である。
switchが無いなら"ほぼどうぶつの森"に来てくれ。
たぬきちならぬみききちが丁寧に案内するよ。
switchがあろうともぜひこっちの森にログインしてほしい。
一緒に君の心のタランチュラをたくさん狩ろう。
無料アップデートチュー
おみくじの結果はぜひ直接聞いてほしい。
やっぱ言う。
大吉だったよ
君に分けてあげたい
『浅草キッド』の劇中で歌われてた「ジョニィへの伝言」がめちゃくちゃ良かった。
響いちゃった。
気がつけば、さみしげな町ね、この町は。
作詞、阿久悠先生。神。
凍えるに狂うと書いて凍狂(とうきょう)
澄んだ空気は早くから月を空に浮かび上がらせて、今は道路を照らしてくれている。
光の反射するテカテカした素材のダウンジャケットは動めく街のイルミネーション。
凍狂を戯れあいながら道を征く僕ら野良二匹
。
かじかんだ命は一緒にいれる時に燃やしてあっためよう。
ね
【東京/横浜萬天堂】実樹/みき
Twitter @miki_mantendo
実樹の写メ日記
-
vol.5『実樹のドZINE』実樹