僕は、人生の分岐点に立つとき<br />
いつも “かっこいい” と思う方を選ぶ。
かつて、会社で僕に勝てる者はいなかった。<br />
知識、スピード、調整力。<br />
どれをとっても、誰よりも上手くやれる自信があった。
でも僕は、自分に“呪い”をかけた。<br />
「はい」と笑って、<br />
無理なことも「できます」と言って、<br />
顧客の嘘にも、上司の無茶にも、全部応える。
──そうやって<br />
僕の姿は、豚になった。
ある日、部下が大きなトラブルを起こした。<br />
会社は騒然となり、<br />
誰もが“責任を押しつけ合うゲーム”を始めた。
僕もそうだった。<br />
資料を整え、誰よりも早く顧客に頭を下げて、<br />
「僕は無実です」と、形だけの正義を装う。
でも──<br />
そのとき、僕の愛機“ダンピール”が<br />
不調のまま空に舞い上がった。
後ろから海賊の不意打ちを食らって、<br />
僕は機体ごと、海へ墜落した。
海の底で僕は出会った。<br />
世間の波に染まっていない、純粋な少女に。
「今のままじゃ、勝てないよ。<br />
でも私が手伝うから──<br />
自由に飛べるように、設計し直そう。」
彼女の瞳には、<br />
僕が忘れていた “空” が映っていた。
決戦の日。<br />
ビルの最上階。<br />
会議室には、偉そうな“敵”が並んでいた。
僕は、改造した愛機に乗って<br />
空の決闘場へ飛び立った。
空中戦は拮抗していた。<br />
背後を奪い合う消耗戦。<br />
気がつけば、燃料が尽きて<br />
二機とも、海へ落ちた。
そこからは、拳の勝負だった。<br />
殴って、殴られて、<br />
痛みも、言葉も超えて、ただ──本音をぶつけ合った。
倒れかけたそのとき、<br />
クロスカウンターが決まって<br />
僕はようやく、<br />
“言い訳の仮面”を打ち砕いた。
会議室で、<br />
資料よりも感情を前に出して話した。
すると──<br />
偉い人が立ち上がって言った。
「わかった。今回は、こちらで持ちます」
彼女がそっと寄ってきて<br />
僕のほっぺにキスをした。
その瞬間、<br />
豚の呪いは解けていた。
かっこいいと思う方に進めば、<br />
自分を偽る必要なんてない。
自由は、<br />
“好きに飛んでいい”という設計図から始まる。
──今の僕は、<br />
海を越え、風を抜けて、<br />
もう一度この空を、自由に飛んでいる。
龍生の写メ日記
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豚と呪いと、自由の設計図龍生