龍生の写メ日記

君は<br />

誰にも気づかれないように<br />

星の言葉を拾い集めてきた人



この世界のまぶしさに<br />

そっとまぶたを伏せながら<br />

それでも誰かの痛みに<br />

先に気づいてしまう



傷つくたびに<br />

&ldquo;普通&rdquo;の仮面を整えて<br />

ちゃんとできてるふりをして<br />

笑ってみせるその瞳に<br />

僕は今日、風の奥のひかりを見た



僕は<br />

夜の影と光の境目を<br />

ずっと歩いてきた



完全でも、不完全でもなく<br />

器用でも、不器用でもなく<br />

誰かを救うために生まれたわけじゃないけれど<br />

&ldquo;誰にも言えなかった気持ち&rdquo;が<br />

どこに隠されているか、なぜか分かってしまう



それが<br />

僕の剣



でもその剣は<br />

誰かを傷つけるためじゃない<br />

心の奥の氷を<br />

静かに砕いて<br />

悲しみがやさしさに変わる瞬間に<br />

立ち会うためのもの



今日は君と、<br />

ローズマリーの香りが漂うホテルで<br />

おいしいごはんを食べて<br />

ほっとする湯気に包まれて<br />

まるで幼なじみに戻ったみたいに<br />

笑いながら<br />

いくつもの&ldquo;ただの瞬間&rdquo;を重ねた



それは魔法じゃない<br />

でも、魔法より大切なものだった



癒して、癒されて<br />

触れて、見つめて<br />

ふたりで静かに<br />

この世界の隅っこに<br />

&ldquo;居場所&rdquo;をつくっていた



君の背中が駅に消えていくとき<br />

胸の奥に<br />

ひとつだけ確かな言葉が灯っていた



きっと忘れない<br />

ってこと



君の歩くその先にも<br />

あの優しい香りがずっと<br />

残っていますように