あの日僕は<br />
昇りかけた階段から<br />
誰かの指先ひとつで、落とされた。<br />
夢も、誇りも、<br />
独裁の気まぐれで灰になる世界。
送り込まれたのは、<br />
巨大なクジラのような建物の中。<br />
臭気と絶望に満ちたその場所には、<br />
人の心を削る音が、<br />
いつも低く鳴り響いていた。
「黙って働け」<br />
「考えるな」<br />
「従えば生き残れる」
そんな呪文のような声に<br />
僕の小さな心は少しずつ縮んでいった。
でも、出会ってしまった。<br />
夜のホテルバー。<br />
小柄で、よく笑う女性。<br />
会社を辞めて、海を越えるという彼女。
「不安より、やりたいことが先」<br />
その言葉は、<br />
心の奥の小さな種火に、<br />
確かに風を吹き込んだ。
僕は目を覚ます。<br />
これは牢獄。<br />
気づかれずに脱出しなければ。
仲間たちと潜伏し、<br />
情報を集め、<br />
奴らを欺きながら<br />
出口を探す日々。
僕たちは“レジスタンス”だった。<br />
小さくても、まだ終わっていない者たち。
けれど、バレた。<br />
処刑場へと連行される僕。<br />
銃口が、<br />
僕の小さな胸に突きつけられる。
そのとき思い出す、<br />
あの瞳。<br />
彼女の眼の中にあった、<br />
「まだ、終わってないよ」っていう光。
僕の体が、<br />
ゆっくりと、音を立てて、<br />
巨大になっていく。
押しつけられた光じゃなく、<br />
あの夜、<br />
僕が自分で選んだ光が、<br />
僕を元の大きさに戻した。
僕は立ち上がり、<br />
束縛の壁を粉砕する。
もう誰の言葉にも、小さくならない。<br />
もう誰の夢にも、閉じ込められない。
僕は今、<br />
自由という名の荒野を走っている。<br />
笑いながら、<br />
この星のどこかでまた、<br />
誰かの火を灯す風になるために。
龍生の写メ日記
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小さな僕と束縛の壁と、光のレジスタンス龍生