「真実を知りたい<br />
それがどんな結果だとしても」
その言葉が、夢と現実のすき間から<br />
ふっと届いた気がした朝だった。
遠く離れた街、<br />
僕は“自分の居場所”に戻るために<br />
無機質な部屋で朝と夜を繰り返しながら<br />
気づけば感情の温度もなくなっていた。<br />
誰の声も聞かず<br />
誰の声も届かない、そんな日々。
ある日、突然<br />
電話が鳴った。
「私だよ。会いたい」<br />
何年も前に、僕を置いて出ていったあの人の声だった。<br />
僕は何も言えず、電話を切った。
そして数ヶ月が過ぎた頃、<br />
戻ってきた僕に、ある旅人のような人が言った。<br />
「会ってみたら、何か変わるかもしれないよ」
その言葉に背中を押されて<br />
僕は銀の扉を開けた。
あの人と過ごした時間は、思っていたより<br />
あたたかく、やさしかった。<br />
それが“愛”だったのか<br />
“演技”だったのか、僕にはまだわからない。
でもどこかで<br />
——この物語は、自分の中で“都合よく綺麗にまとめたかった”だけじゃないか?<br />
という声が響いた。
パラレルワールドのように<br />
もうひとつの自分が別の地平で目を覚ましていた。<br />
そして僕は気づく。<br />
これは過去に決着をつける話じゃなく、<br />
“自分の静けさを取り戻す”ための旅だったのだと。
夜、外に飛び出し<br />
月の光を浴びながら<br />
僕はポケットから銀のダーツを取り出した。
狙う先には<br />
赤く脈打つ、“偽りの自分”という名の星。
そして<br />
僕は、投げた。
胸の奥で何かが崩れ、<br />
その跡にふわりと風が吹いた。<br />
静かだった。<br />
苦しみも、怒りも、言葉も消えて<br />
ただ、平穏が残った。
「真実を知りたい<br />
それがどんな結果だとしても」
その言葉が、<br />
ようやく自分のものになった気がした。
龍生の写メ日記
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電話と月の光と、パラレルワールド龍生