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龍生の写メ日記

  • 路地裏と雨と、God Bless
    龍生
    路地裏と雨と、God Bless

    雨が激しく降る夜だった。<br />

    車の中、彼女は声を押し殺して泣いていた。



    別れを告げたのは僕。<br />

    でも、本当に崩れかけていたのは、<br />

    あの古びた路地裏じゃなく、僕のほうだった。



    彼女は、誰が見ても美しいと言われる人だった。<br />

    出会いは不思議で、どこか物語のようで、<br />

    気がつけば惹かれていた。



    でも彼女が愛したのは、<br />

    僕の&ldquo;外側&rdquo;だった。<br />

    「前の人みたいに、強く言い返したりしてよ」って、どこか拗ねた顔で言ってた。



    僕は、うまく笑ってごまかしていたけど、<br />

    本当は、自分に自信なんてなかった。<br />

    だから、<br />

    「好きだよ」って言ってくれる人なら<br />

    誰でもいいって、思っていたのかもしれない。



    音楽も、服も、言葉も、<br />

    全部「どう見られるか」で選んでいた。<br />

    自分じゃなく、他人の視線の中で生きていた。



    ある日、<br />

    街で流れる音楽が耳に残った。<br />

    なんとなくリズムをとってみたら、<br />

    身体の奥から、<br />

    波みたいに楽しさが湧きあがった。



    心が、揺れた。<br />

    声にならない声で、何かが叫んでいた。



    それが、<br />

    僕の&ldquo;目覚め&rdquo;だった。



    もう、<br />

    誰かの目の中じゃなく、<br />

    自分の感覚で、生きていこうと決めた。



    それがどんなに見えにくい道でもいい。<br />

    光なんてなくても、<br />

    その闇の中で自分が笑っていられるなら。



    車を降りたとき、<br />

    雨がびしょぬれの身体を打った。<br />

    でもそれは、<br />

    こびりついていた過去を<br />

    ひとつずつ洗い流してくれるようだった。



    まるで、God Bless。<br />

    僕に、そして、彼女にも。



    振り返らずに歩いたその夜、<br />

    初めて、&ldquo;自分という物語&rdquo;が息をし始めた気がした。