スマホに並ぶプレイリストに<br />
見覚えのある音が流れていた。<br />
指先がなぞるたび、<br />
そのリズムが、どこか僕の鼓動に似ていた。<br />
<br />
あの頃、僕が胸にしまった自由の音。<br />
まるでカセットテープの中に記録されていたように、<br />
そのメッセージが、彼女の中で再生され始めている。<br />
<br />
いつの間にか、似たような音楽を選ぶようになっていた彼女。<br />
その変化が、なぜか胸の奥を静かに揺らす。<br />
<br />
言葉の節々からは<br />
自由の香りがかすかに立ちのぼっていた。<br />
ふとした仕草に、<br />
触れたら壊れそうな、でも強くしなやかなものを感じた。<br />
<br />
昔は見えなかったはずの、自分の輪郭。<br />
それがいま、肌の内側から浮かび上がるように<br />
くっきりと滲んでいる。<br />
<br />
音楽と自由は、よく似ている。<br />
さまざまな音が混ざり合っても<br />
自分という軸がぶれなければ<br />
そのすべては、自分だけの音になる。<br />
<br />
川の流れに身を委ねるように<br />
心のままに進んでいく。<br />
そのまま溶けるように、<br />
自由という名の海へ、たどり着く。<br />
<br />
かつての自分は<br />
心の声を押し殺し、<br />
他人に合わせることが<br />
「認められる」ための条件だった。<br />
<br />
でも本当は――<br />
まわりに合わせず、<br />
自分の内なる声に<br />
そっと触れることこそが、<br />
自由への扉だった。<br />
<br />
彼女は今、<br />
その扉をゆっくりと、<br />
指先で撫でるように開いている。<br />
<br />
きっといつか、<br />
人生を本気で楽しめる、ほんのひと握りの存在になる。<br />
誰かの空を照らす、太陽のように。
龍生の写メ日記
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川と夢と、カセットテープ龍生