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龍生の写メ日記

  • 昼と夜と、薔薇の香り
    龍生
    昼と夜と、薔薇の香り

    ある日<br />

    ひとつのメッセージが届いた<br />

    <br />

    短くて<br />

    言い訳のない言葉だったけど<br />

    どこか、やわらかくて<br />

    ふれる前から なにかを知っているような<br />

    そんな温度があった<br />

    <br />

    胸の奥で<br />

    なにかがふっと<br />

    ほどけていった<br />

    <br />

    彼女の昼は、明るい<br />

    誰にでも愛される声<br />

    空気をほどくような笑顔<br />

    まわりから頼られながら<br />

    いつも 自分のことは少しあとまわしにしている<br />

    <br />

    でも夜の彼女は<br />

    たぶん 誰も知らない顔をしていた<br />

    <br />

    遠慮という名のやさしさで<br />

    言いたいことを飲み込んで<br />

    静かに、自分を閉じてきた人<br />

    <br />

    優しくしたいだけなのに<br />

    あとからそっと<br />

    「ごめんね」って自分を責めてしまう<br />

    <br />

    彼女は、まるで薔薇だった<br />

    <br />

    遠くから見ると<br />

    美しくて、気高くて<br />

    誰もが惹かれるのに<br />

    <br />

    近づいた瞬間<br />

    その肌には小さな棘があって<br />

    少しだけ、触れる勇気を試される<br />

    <br />

    でもね<br />

    その棘は きっと<br />

    ずっと誰かから<br />

    心を守るためについていたものだった<br />

    <br />

    香りは、ほんとうに甘くて<br />

    やさしくて<br />

    その奥に、すこしだけ ひそやかな色気がまざっていて<br />

    <br />

    その手がふと触れたとき<br />

    無意識に 目を伏せたあの表情が<br />

    まだ 僕の指先に残っている<br />

    <br />

    あのときのメッセージに<br />

    僕の想いがにじんでいたなら<br />

    <br />

    「あなたのやさしさは<br />

    ちゃんと届いてたよ」<br />

    <br />

    言葉にできなくても<br />

    伝えたかったのは それだけだった<br />

    <br />

    それだけで、<br />

    ほんとうに、じゅうぶんだった