龍生の写メ日記

出会いは、<br />

海を滑る船の上だった。<br />

<br />

遠くから聴こえてくる音のうねりに誘われて、<br />

夜風とともに、<br />

彼女の世界へと吸い込まれていった。<br />

<br />

静けさを宿した眼差しに、<br />

なぜか心がほどけていく。<br />

飾らないのに、<br />

どこか、肌の内側まで届くような&mdash;&mdash;<br />

そんな余韻を残す人だった。<br />

<br />

流れるような旋律が、<br />

しなやかに夜を撫でていく。<br />

<br />

彼女は音に寄り添いながら、<br />

誰よりも自由に生きていた。<br />

<br />

その指先が、<br />

その視線が、<br />

空気をなぞるたび、<br />

僕の深いところが、静かにざわめいた。<br />

<br />

触れたわけじゃないのに、<br />

ふいに火照る瞬間があった。<br />

<br />

やがて、<br />

彼女の夜に、何度も誘われるようになっていた。<br />

音に揺れ、<br />

夜に溶ける。<br />

<br />

彼女は、<br />

静かな日々の中でも、<br />

音という名の自由と繋がっていた。<br />

<br />

今日もきっと、<br />

彼女はどこかで鳴らしている。<br />

<br />

誰にも縛られず、<br />

誰かの奥に火を灯すように&mdash;&mdash;<br />

あの、自由という音楽を。<br />

<br />

そして僕は、<br />

あの夜とあの船と、<br />

彼女の残した音の揺らぎを、<br />

時空の狭間で、今もどこかで探している。