龍生の写メ日記

陽ざしが、<br />

肌の奥まで染み込む頃だった。



彼女は、<br />

旋律のようにしなやかで、<br />

静けさの中に熱を宿していた。



歌をくちずさみながら微笑む横顔も、<br />

白鳥のように揺れる気配も、<br />

ふとした瞬間に、<br />

夜の空気をやわらかく染めていった。



誰かの隣に暮らしながら、<br />

彼女は夜になると、<br />

心の奥をそっと解放していた。



ふたりで過ごした夜があった。<br />

星が濃く瞬く時間、<br />

止まらない話と、途切れない笑い声。<br />

触れていないのに、<br />

心の深い場所が、不意に重なった。



日常に埋もれていた彼女の中で、<br />

その夜、なにかが芽吹いた。<br />

自分の声に、耳を澄ませるように。



そして、彼女は静かに歩きはじめた。<br />

誰のものでもない、自分だけのリズムで。



教えることは、<br />

きっと、自分の輪郭を取り戻すことだったのだろう。



今はもう、会っていない。<br />

でもふとした夜に、<br />

あの笑い声が、胸の奥に揺れる。



彼女は今も、<br />

星空のどこかで歌いながら、<br />

白い羽根のような意志で、<br />

自由をまとっているのかもしれない。