東京萬天堂

東京/性感マッサージ/新宿発 関東近郊スピード出張 

「Kaikan(カイカン)を見た」とお伝え下さい!
090-8811-7223

龍生の写メ日記

  • 壁画と翼と、帰り道
    龍生
    壁画と翼と、帰り道

    出会いは、音のなかだった。<br />

    まだ形にならない動きを、<br />

    たしかめるように繰り返す彼女の背中が、<br />

    なんだか少し、切なく見えたのを覚えている。



    年齢なんて意味を持たなくなるくらい、<br />

    彼女は自分のリズムで、世界と対話していた。



    後になって知った。<br />

    彼女は、誰もが一度は憧れるような場所を通ってきた人だった。<br />

    整えられた光の中に、一度は身を置いたこともあったという。



    でもあるとき、<br />

    その明るさのなかに、自分の影が映らないことに気づいた。



    「自由」という名の温もりが、<br />

    どこかで薄れていく気がして。



    だから彼女は手放した。<br />

    安心も、肩書きも、褒められる未来も。



    そして、自分の言葉で綴った手紙を、<br />

    まだ見ぬ国へと届けた。



    彼女は旅に出た。<br />

    誰も知らない地図の上に、自分だけの線を引きながら。



    痛みもあったはずだ。<br />

    でもその痛みさえ、自由の証として<br />

    笑って受けとめていたように見えた。



    時間が流れ、<br />

    彼女はふたたびこの街の空気を吸っていた。



    その日の帰り道。<br />

    偶然出会った壁画に描かれた、赤い翼。



    彼女は、なにも言わずにその前に立ち、<br />

    まるで、自分の背中に羽根があることを<br />

    確かめるように微笑んだ。



    思えばあのとき、<br />

    誰もが選ぶ&ldquo;まっすぐな道&rdquo;を曲がった彼女が、<br />

    自分の羽根で、空を描きはじめた瞬間だったのかもしれない。



    見えない翼は、誰にも気づかれないけれど、<br />

    その風だけは、確かにそこに吹いていた。