今から約12年前、地元から上京したばかりの私は、職場以外に知り合いがまったくいませんでした。
当時の休日の過ごし方は吉祥寺の小さなライブハウスで音楽を聴くか、映画館で映画を観るかのどちらかです。
よく通った映画館は、早稲田松竹と今はなき渋谷アップリンクでした。
大手映画会社の影響下にないそれらの独立系の映画館は、たくさんの素晴らしい作品を教えてくれました。
映画は高校生くらいから本格的に好きになったのですが、そのような孤独な休日によって私の映画好きがさらに進行していくことになりました。
ということで、今日から不定期でキネマ禅報が始まります。
もうなんでも始められそうですね。
偏愛する映画作品を自分の都合で好き勝手に紹介していきます。
タイトル:インサイド・ルーウィン・デイヴィス
監督:コーエン兄弟
製作国:アメリカ
記念すべき第一弾は、大好きな監督の大好きな作品です。
舞台は1961年のNYで、多くの若者たちがスターを目指してフォーク音楽をがんばっていた時代です。
実際にボブ・ディランという世界的スターが誕生しましたが、その影にはほとんどぱっとしなかった無名のフォークシンガーたちがたくさんいました。
この映画の主人公(演:オスカー・アイザック)は、ぱっとしなかった側の架空の無名フォークシンガーです。
最初から最後まで救いのない、何ひとつ達成のない、ため息がたくさん出てしまうストーリーです。
主人公も結構どうしようもない男です。
しかしながら、その男の優しい性格と優しい歌が深い共感と感動を誘います。
個人的に一番の見どころは、主人公の元カノ(演:キャリー・マリガン)が主人公に対して容赦なく罵倒するシーンです。
罵り方やイラつき方がとてもリアルで、セリフのセンスがいかにもコーエン兄弟的で笑えます。
救いのないストーリーですが、コーエン兄弟らしく作品全体的にシュールな笑いが散りばめられています。
歌手のジャスティン・ティンバーレイクも出演しています。
休日に特段やることがなく、男の不器用さと優しい音楽に触れたいときがありましたら、この映画をお勧めします。
禅の写メ日記
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キネマ禅報 #1 インサイド・ルーウィン・デイヴィス禅