こんばんは。伶です。
今日はSSを投下して消えます。
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そんなバカな、と彼は言った。
「信じたくない気持ちは分かりますが……」
探偵はバツが悪そうに写真に目を落とした。そこには、男と腕を組む彼の妻の姿があった。
「……まだ続けますか?」
彼は首を振り、黙って部屋を後にした。張りつめた空気が弛み、探偵はふうっと息を吐いた。台所では助手が湯を沸かしている。
彼女は背を向けたまま、「いつも思うんですけど」と切り出した。
「どうして浮気調査なんて頼むんでしょう」
「どうして?」
「だって、お金で絶望を買うようなものじゃないですか」
「シロの場合だってある」
「そんなの信じられないです」
「……」
「どうぞ」
机の上に年季の入ったマグカップが置かれた。ミルクをたっぷりと加え、軽くかき混ぜる。白と黒が混ざり合う。
「まあ、絶望にも値段はつくってことさ。絶望を納得と置き換えてもいい」
「うーん……それって悲しくないですか」
「最も悲惨なのは納得できないことだよ。疑い深い依頼人ほど調査は長引く。シロだと言っても信じてもらえないからだ。結局、人は信じたいものしか信じられないんだな」
「じゃあ、そういう人にはクロでもシロって言っておけば儲かりますね」
「……キミに依頼されたらそうするよ」
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伶の写メ日記
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Short #1伶