コメダ珈琲から徒歩10分程度の場所にホテルはあった。
チェックインを済ませてエレベーターで二人きりになると、彼は私の腰に手を回してきて、これから犯す過ちの序章に過ぎないとわかっていながらも、彼の手から伝わる体温が私の吐息を熱くさせる。
部屋に入って鍵を閉めるのを合図に、彼は私を抱き寄せキスをした。唇と唇が触れるだけの優しいキスは、私と彼の興奮を焦らし、舌を絡ませ始める。
薄暗い部屋の中で貪るように求め合う私と彼。
私の腰に巻かれた大きな彼の手も、硬くなっている彼の性器も、その全てがこの時間と空間の中で私を欲望の沼へ誘おうとしている。
ベッドまで移動してから、彼は私の服を次第に脱がしていく。
「めっちゃ大きい」
私の露出した乳房を見て興奮しているのが伝わって嬉しかった。
綺麗な体ではないし、ぽっちゃり体型で幻滅されることも想定していたが、その懸念を払拭するように彼は私の体を求めてくる。
乳首をなぞるように沿う彼の舌に、私は声を漏らしてしまう。彼はそれを聞いて、もう片方の手を私の太ももの方に伸ばしてきた。
「こっちも舐めたい」
シャワーを浴びていないことの恥ずかしさと申し訳なさがありながらも、私は彼の優しい手を言い訳に、自ら両脚を広げた。
やわらかい彼の舌の表面が私の突起したクリトリスを触れるか触れないかでなぞっていく。
ドロドロになった私の性器に彼の長くて綺麗な指が入り、舐められながら指の腹でGスポットを押されているのがわかる。
「やばい、イっちゃう…」
浮かぶ腰を震えさせながら、彼の舌と手によって絶頂を迎えた。
そんな私を彼は恍惚とした表情で眺めている。
「俺もう我慢できないんだけど」
一人称が"俺"になるほど高揚し、息をつく間も無く私の体を求めてくる彼を愛おしく思った。
いつの間にかゴムの装着された彼の性器が私の膣内へ入ってくる。
「痛かったら言ってね」
私の髪を撫でてキスをした後、彼はゆっくりと腰を動かし始める。
「優兎くん」
彼の男根が私の膣内をかき乱していくのがわかる、肉と肉が当たる淫らな音と軋むベッドの音が交差する。
前戯でイったばかりの全身は、彼の腰の動きを受け激しく痙攣する。
「俺そろそろイきそう…」
間も無く絶頂しようとする彼の汗が髪を伝い私の胸に滴ってくる。それも愛おしい。
彼の全てが私の心の氷塊を溶かしていく。
背徳感など霞むような深い快楽の渦が、私を飲み込んだ。
ホテルの最寄り駅で解散する時、優兎は人目のつかない場所で最後に私に口付けをした。
また会おうね、とも言わない、ただ優しく儚い眼差しで。
深夜、寝静まる夫を置いてベランダに出ると、いつだかの煌々とした月がこちらを覗いている。
私は今日のこの恋を、そっと月の陰に隠した。
4話 完
詩の写メ日記
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短編官能小説【恋は月の陰に】4話/全4話詩