某マッチングアプリに登録して、すでに1週間が経過していた。
私が入れたアプリは、ユーザー数が極めて多く、巷では"ヤリモクアプリ"と揶揄されているようだが、実際に複数のユーザーのプロフを見てみると、アプリを使う目的も人によってさまざまのようで、私はそれに安心した。
お互いがお互いをいいねすればマッチになり会話ができるようになるしくみで、やってみるとどういうわけか8割型マッチした。
だがそれは首から上を載せていない上に、胸の強調されたニットの写真をあえてメイン画像にしているからかもしれないし、そもそもただ"女"というだけで無差別に男たちからいいねされているだけなのかもしれない。
実際マッチはしてもメッセージはほとんど来ないのだ。
「職業:占い師 占ってほしいとか言う人はまずお金を払ってください。目的は察して。既婚者」
まぁ、こんな文章を読んでメッセージを送る気になる男はいないだろうと、我ながら自分の書いたプロフィール文を見返して思う。
1ヶ月ほど前に同じ占い師仲間の3人で集まった時、そのうちの1人が「マチアプは変な男からの失礼なメッセージが届きまくるからプロフィール文はふるいにかけるつもりで多少男受け悪い内容にしておいた方がいい」と話しているのを聞いたことがあり、それをなぜか覚えていた私はその金言に従ったわけだ。
失礼な男はごめんだが、メッセージが来て不快に感じたらブロックすればいいだけだしなとも思い、あまりにもメッセージが来ない現状を打破すべくプロフィール文を変えようとしたその時、マッチングの通知と、それからすぐして一通のメッセージが届いた。
「moonさんはじめまして。優兎といいます。メイン写真の素敵な雰囲気に惹かれたのと、プロフ文からもすごく自分に正直な方なんだなと感じて気になりました。3枚目の桜の写真も綺麗ですね、最近見に行かれたんですか?」
私のプロフィール文よりも長い文章が送られてきたことにも驚いたが、メッセージの丁寧さにまず好感を抱いた。そこから返事を返してトントン拍子に話が進み、翌週には会う約束をとりつけた。浮き立つ気持ちを家庭内で隠すことは容易ではないが、生活を脅かすような非現実的なスリルすらも、私の心を彩る絵画だと思えた。
夫と娘が家を出たある朝、私は数日後に約束された優兎との情事を想像し、リビングで激しく自慰をした。久方ぶりの絶頂をし、そこから滴る愛液を、今朝夫が脱いだパジャマで拭き取る。
大丈夫、どうせこれも私が洗うのだから。
2話
詩の写メ日記
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短編官能小説【恋は月の陰に】2話/全4話詩