第4話:夜の温度
「DMの返事、めっちゃ早いな…」
いつもなら既読だけで終わる時間に、すぐ返ってくる言葉たち。
それだけのことで、こんなにも心が動くなんて。
回遊は初めてじゃない。
でも、リョウとのやりとりはどこか違っていた。
まるで、見透かされたような感覚。
ただの営業文じゃない。私の奥に言葉を差し込んでくる、そんな感覚。
「会ってみたいかも」
自然とそう思った。
レン以外に心が動くなんて
自分でも少し意外だった。
*
当日、待ち合わせ場所の扉を開けた瞬間
彼は、静かな目で私を見つめてきた。
「会ってくれて、ありがとう」
その一言が、想像以上に深く、優しく届いた。
ホテルの部屋に入ってからも、彼の雰囲気は穏やかで
でもどこか、触れたら崩れてしまいそうな儚さを纏っていた。
「今日、どんな気持ちで来てくれたの?」
リョウの問いかけに、一瞬だけ心が揺れる。
そんなの言えるわけない。
寂しさとか埋められない何かを求めてきたなんて言えるわけない。
でも。
「なんか、、話したかったのかも」
気づいたらぽつりと口をついていた。
彼は、黙って頷いてくれた。
それだけで心の鍵がひとつ外れる。
そのあとは不思議なくらい話せた。
仕事のこと、SNSのこと、そしてレンのことまで。
「5年も通ってるのに、DMは週1で絵文字もなくて。
でも会えば優しくて、それだけで、もう充分な気がしてた」
「でも、充分じゃなかったんだよね?」
リョウの言葉は、突き刺すようで、
でも、痛くない。
むしろ、言ってほしかった気がした。
「ごめんね、最初からこんな話」
「いいんだよ。言いたいことを我慢しないで」
そして彼は、私の手をそっと取った。
その手の温かさに、私はまたひとつほどけていく。
指圧マッサージが始まる。
ベッドにうつ伏せになると、リョウの手が肩にそっと置かれる。
そのままじんわりと圧をかけながら
無言のまま背中を押してくれる。
言葉は少ないのに、手のひらが語ることがたくさんあって。
私はだんだんと、気持ちの中のざわつきが落ち着いていくのを感じた。
「強さ、大丈夫?」
「うん、ちょうどいい…」
「よかった。じゃあ、次はパウダーマッサージしていくね」
その声が、妙に耳に残る。
レンの声とも違う。
他の誰とも違う。
今、私のためだけにある音に聞こえた。
私はこの日、少しずつ何かを塗り替えられていく予感を感じていた。
みゆうの写メ日記
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【抱かれても、抱きしめられない】連続女風小説4/7みゆう