第0話:誰にも言えない恋をしている
「ねぇ、私、セラピストに恋してるって言ったら、引く?」
そんな言葉を、誰かに言ってみたかった。
でも口に出した瞬間に、この恋が崩れてしまうような気がして
いつも心の中でそっと押し殺す。
恋、というには不確かで
依存、というにはあまりに純粋で
執着、というには切なすぎる。
彼の名前はレン。
私はみゆ。
彼はセラピストで、私はリピートする側のユーザー。
それ以上でも、それ以下でもない•••はずだった。
いつからだろう。
「また来てくれて嬉しいよ」の一言が
他の誰にも言っていない特別な言葉に聞こえてしまったのは。
いつからだろう。
終わったあとの「気をつけてね」の言葉に
行かないでという本音を勝手に重ねるようになったのは。
会えば会うほど、知れば知るほど
施術だけじゃない感情が芽生えていった。
だけど、彼のDMの返信は週に一度だけ。
「ありがとねー!」の一言に絵文字ひとつ。
それでも、会えば甘く囁いてくれるから
私はその矛盾を恋にしてしまった。
そんな感情を抱えたまま、5年間彼をリピートしている。
だけど、ふと気づく。
この恋は、いつも私からしか伸びていない。
彼の視線の先に私はいるの?
それとも、五年間という時間は
ただの数字でしかないの?
「レンに会いたい」
そう思えば思うほど、胸が苦しくなっていく。
逃げ道を探すように、他のセラピストとも逢瀬を重ねる。
でも、誰もレン以上には感じられない。
レンの存在を上書きできない。
そう思っていた。あの日までは•••。
その夜、一通のDMが届く。
まるで、心を覗き込まれたような言葉。
それは、まだ見ぬ誰か。
リョウという名のセラピストからだった。
私は思った。
これが運命なのか、それとも
「終わりの始まり」なのか。
みゆうの写メ日記
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【抱かれても、抱きしめられない】連続女風小説0/7みゆう