私は夜1人で深いため息をついた。
カウンセラーとして心の悩みに寄り添ってきた私にとって、セラピストとして身体に触れ、施術を行うことはまだ慣れない感覚だった。
心とカラダ、その二つが絡み合う場所に立っている自分が、不意に宙に浮いたように感じられる。
「相手が心の痛みや寂しさを感じている点は、カウンセラーとセラピストは同じだ。けれど、施術で満足してもらうという点が、カウンセリングとは全く違う。」
私は両手を見つめ、その手が今まで心の支えになってきた人々を思い出す。カウンセリングでは声や言葉で心を癒してきたが、セラピストとしては直接触れ、体そのものに向き合う必要があった。
「本当にこれでいいのだろうか?」
その問いは、心の奥に小さな不安の種を残していく。部屋に備えられたタオルを整えながら、私は自分の新たな役割を受け入れる勇気を探した。
異なる点に戸惑いながらも、その先にある笑顔や安らぎを想像してみる。肩幅の広い自分が、少しでも包容力を持って相手の心と体を包むことができるなら――。
「一歩ずつ、進もう。」私は静かに自分にそう言い聞かせ、最初に訪れる女性を迎える準備をした。彼の旅立ちはまだ始まったばかりだが、その一歩は確かに踏み出されたものだった。
明の写メ日記
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セラピストの旅立ち明