夏の匂いが風に混じると、ふと、海が見たくなる。<br />
あの、きらきらと光を跳ね返す水平線。<br />
耳に残る波のリズムは、何年経っても変わらない。
だけどもう、肌をじかに太陽に晒す勇気はない。<br />
あの頃は、シミなんて知らなかった。<br />
ただ日焼けクリームを塗り、笑いながら泳いでいた。<br />
焼けた砂に足を取られながら、はしゃいでいた。
今は、帽子を深くかぶって、長袖を羽織って、<br />
水際をただ、歩く。波を眺める。<br />
泳がなくても、海はそこにいてくれる。<br />
遠くを見ているだけで、心がすうっとほどけていく。
日焼け止めを塗り直す手が、丁寧になったのも、<br />
なんだかちょっと可笑しくて、愛しい。
あの頃の僕も、今の僕も、<br />
きっと海の青さに恋してる。<br />
夏が近づくと、思い出すんだ。<br />
ただ、海が見たい。<br />
それだけで、夏の始まりは少し特別になる。
恭介の写メ日記
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夏が近づくにつれ海が見たくなる恭介