20歳の女の子、知能が遅れている。
私は彼女の食事や生活の世話をしている。
彼女は手をつないでくる。甘えたいのだ。
けれどそれを許すとべったり甘えてきて離れなくなる。
だから他の職員は冷たく思いきり引き離しているが、やっぱり可哀そうだと思う。
家族は彼女を可愛がり、そして彼女を見捨てた。
彼女はべったり甘えてくるが、私は嫌な気持ちは起こらない。
抱きしめてあげればいいがセクハラになる。
マニュアル通りに甘えを拒絶すると、頭を壁や床にたたきつける。
自傷行為をする。額から血を流す。
「やめるんだ」と言って、彼女の額を手で押さえる。
だが、彼女はそのまま思いっきり壁に頭を打ち付けるので、掌を打撲した。
彼女は毎日、同じDVDを見て過ごしている。つまらない毎日。
この現実世界、この日本はとても息苦しくて、窮屈で、幸せが感じられない。
性の歓びの中にしか本当の自由がないようにも思える。
だが、彼女にはその歓びもない。
20歳の女の子。
恋愛したり、旅行したり、最高に楽しい年齢。
監禁された部屋で、わたしは彼女と過ごしている。
彼女の言葉にならない言葉を聞きながら私は思う。
尾崎豊は自由を求めて歌った。私もやっぱり、この小説を完成させなければならない。
シェリー、夢を求めるならば 孤独すら恐れやしないよね
シェリー、ひとりで生きるなら 涙なんか見せちゃいけないよね
はるとの写メ日記
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シェリーはると