ヤツに支配されていた恐怖を。
鳥籠の中に閉じ込められていた屈辱を。
三重の壁に守られ、百年の安寧を享受していた人類。
しかし――
雷鳴のごとき一撃が、その均衡を打ち砕いた。
「……来た……」
空が裂け、地鳴りが響く。
次の瞬間、ウォール・マリアの南端――シガンシナ区の壁に、巨大な影が現れた。
筋骨隆々の異形の巨人。
そして、その中心に立つは――
ライナータカ。
「俺が……壊す。」
低く、呟くような声とともに、
ヤツは、拳を振り下ろした。
ドォォォォンッ!!!
石壁が砕け、瓦礫が宙を舞う。
数百年、決して破られることのなかったウォール・マリアが、
まるで紙のように崩れ落ちた。
「あれは……何だ……」
「巨人じゃない……人か……!? いや、あれは“破壊の化身”……!」
民衆は逃げ惑い、叫び、祈る。
だが無情にも、破壊者・ライナータカはただ一歩、また一歩と壁内へと進んでいく。
その背に、新たな時代の足音を引き連れて――。