【羞恥】
時刻は深夜をまわっていた。
僕と彼女は暗い夜道をとぼとぼと横に並んで歩いていた。
淡い金木犀の香りと共に生ぬるい夜風が彼女の髪を揺らす。
その拍子に彼女の汗ばんだ首筋があらわになり僕は思わずごくりと唾を飲みこんだ。
それから僕たちはしばらく歩いた。
踏切が見えた。
毎朝利用している踏切だ。
もちろんもう電車も走っていなければ周りには誰もいない。
しんと静まり返ったその踏切は普段とは違う顔を僕らに見せた。
いつもは長く待たされ駅まで走る大嫌いなその踏切も、今日だけは居心地が良かった。
「そこに立ってて。」
そう言うと僕は彼女をその場に残して踏切を渡り始めた。
踏切を渡り終え振り返ると、街灯の薄明りに照らされ、時折生ぬるい夜風が、イタズラをする子どものように彼女の髪の毛をゆらゆらと揺らしていた。
線路を挟んで立っている彼女は実に妖艶だった。
「カチッ」
少し強い夜風が吹き、一斉に揺れ始めた雑草を合図にするかのように、僕はポケットに忍ばせていた丸いリモコンのボタンを押した。
ブーッブーッ
一定のリズムを刻む振動音が静寂を切り裂いた。
彼女はすぐにその場に崩れ落ち小刻みに震え始めた。
その崩れゆく姿は実に脆く、儚く、何より美しかった。
「ほら、足を開いてよく見せて。」
ブーッブーッブーッ
ボタンを押すたびにその振動は強くなる。
無情にもワンピースを着た彼女の熟した果実は見えるはずもなかった。
それでも僕は見えないものを見ようとして覗き込んだ。
無数の散りばめられた星に照らされる彼女は実に妖艶で美しかった。
これが僕の
「変態観測」
拓也
拓也の写メ日記
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【羞恥】拓也