やる気に頼らず運動を続けるための考え方
運動を続けるには、ただ「やる気」に頼るのではなく、環境や行動の仕組みを整えることが大切です。<br />
最新の研究では、目標の立て方や行動のきっかけづくり、少しの運動でも毎日続ける工夫、記録とフィードバック、仲間のサポート、運動しやすい環境づくり、そして前向きなセルフトークなどが有効とされています。以下ではこれらのポイントをそれぞれ解説します。
1. SMART目標を「柔らかく」使う
「SMART目標」とは、<br />
Specific(具体的)、<br />
Measurable(測定可能)、<br />
Achievable(達成可能)、<br />
Relevant(意義がある)、<br />
Time-bound(期限付き)<br />
の5つの条件を満たす目標設定法です。<br />
たとえば「来月までに週に3回、30分間ウォーキングする」といった具体的な目標は、取り組みやすく、進捗が確認しやすくなります。
ただし、最新のレビューによると、この方法を過度に機械的に使うことは逆効果になる場合もあるとされています。<br />
というのも、SMART目標では動機づけの「理由」や感情、柔軟性が十分に考慮されにくく、「目標を守らなければ」というプレッシャーが挫折につながることもあるからです[1]。
そのため、SMART目標はあくまで補助ツールとし、「なぜ運動するのか」という自分なりの意義を忘れないようにしましょう。<br />
「なぜ運動するのか」については前回の日記をぜひ参照してください。
2. 行動の“トリガー”を設定する
新しい運動を日常の習慣にするには、すでに日々行っている行動と結びつける「トリガー設定」がとても効果的です。<br />
たとえば「朝起きたらストレッチをする」「歯磨きの後にスクワットを10回する」といったように、毎日欠かさず行う行動に運動を“くっつける”ことで、無意識に体が動くようになります。
ある研究では、「運動を始める合図(instigation habit)」の習慣が、実際の運動頻度を最もよく予測する要因だったと報告されています。つまり「どんな運動をするか」よりも「いつ始めるか」が重要だということです[2]。
3. “ちょっとだけ運動”を許可する
運動を習慣化するうえで、完璧主義は大敵です。<br />
やる気が出ない日でも「1分だけやってみる」「ストレッチだけでもOK」といった“ミニマム行動”に切り替えることで、習慣の連続性を保てます。
実際、心理学の研究では、運動の難易度や時間を一時的に下げる(=要求量の削減)ことで、行動の開始率が大きく向上することが示されています[3]。<br />
このような「最低限のルール」を持つことで、「今日は無理だからゼロ」という事態を減らすことができます。
4. 運動を記録して“見える化”する
自分の行動を記録する「セルフモニタリング」は、習慣化にとって非常に有効です。<br />
たとえばアプリで歩数や運動時間を可視化することで、「やった感」を感じやすくなり、達成感や継続意欲が高まります。
あるメタ分析では、自己記録を取り入れたグループは、対照群よりも1日あたり約900歩多く歩くようになったと報告されています[4]。<br />
記録の方法は何でも構いません。ノートに書くだけでもOKです。
5. “一緒に頑張る人”をつくる
仲間や家族とのつながりは、運動継続において強力な支えになります。<br />
実際、多くの研究で、社会的サポートがある人は運動習慣を維持しやすいことが確認されています。
特に、家族やパートナーの応援、友人との共同行動、SNSでの成果報告などはモチベーション維持に効果的です[5]。<br />
「一緒に頑張っている人がいる」という感覚が、孤独や面倒くささを和らげてくれます。
6. “運動したくなる”環境づくり
環境を変えることで習慣は自然と変わります。たとえば部屋の見える場所にヨガマットやダンベルを置いたり、通勤時に階段を使いやすい靴を履いたりするなど、「運動しやすい仕組み」を整えるのがポイントです。
ある研究では、生活空間に運動ツールを設置するだけでも、行動の頻度が増える傾向があると示されています[6]。また「テレビを見るなら、エアロバイクに乗りながら」など、日常の習慣とセットにするのも有効です。<br />
僕の場合は夕方5時になったらリマインダーが通知されるように、スケジュールアプリで設定しています。
7. 自分を励ます“ポジティブセルフトーク”
運動中はつらさや面倒な気持ちが湧いてくるものです。<br />
そんなときは「自分はやれる」「終わったらスッキリする」といったポジティブな言葉を自分にかける「セルフトーク」が助けになります。
こうした前向きな思考を繰り返すことで、「運動する自分」というセルフイメージが強化され、やる気に頼らず行動が安定するようになります。<br />
心と体の両方から習慣づくりを支える、意外と重要なスキルです。
まとめ:習慣化のカギは「仕組み」と「工夫」
運動を習慣にすることは、正直、最初は誰にとっても難しいものです。始めたばかりの頃は、「今日もやらなきゃいけないのか」「めんどくさいな」と思うことの連続でした。僕自身もそうでした。やろうと決めても、気分が乗らない日があって、続かないことに自己嫌悪を感じたこともあります。
でも、それでも何度も「とりあえずちょっとだけやろう」と、気が進まないまま体を動かしているうちに、不思議とだんだんと習慣になっていきました。完璧じゃなくていい、1日5分でも、少し動けばOK。そう思えるようになると、心が楽になって、むしろ続けることが楽しくなっていったんです。
また、プロ野球選手のダルビッシュ有さんの言葉にも、とても励まされました。彼は「継続とは毎日やることじゃない。たとえ途切れても、しばらく経ってまた再開すれば、それも継続だ」と語っています。この考え方に救われました。途中で休んでしまっても、また戻ってこれば、それでいい。そう思えるようになってから、筋トレも自然と長く続くようになりました。
最初から完璧を目指さなくてもいい。少しずつ、自分にとって無理のないやり方で続けていくことこそが、本当の意味での「継続」なのだと思います。今日できなかったとしても、明日また始めれば、それで十分です。自分を責めず、優しく、前向きに続けていきましょう。
参考文献
[1] Swann C, Jackman PC, Lawrence A, et al. The (over)use of SMART goals for physical activity promotion: A narrative review and critique. Health Psychol Rev. 2023;17(2):211-226.
[2] Phillips LA, Gardner B. Habitual exercise instigation (vs. execution) predicts healthy adults’ exercise frequency. Health Psychol. 2016;35(1):69-77.
[3] Gamwell A. The 1 Mistake When Forming an Exercise Routine. Psychology Today, 2022年12月.
[4] Vetrovsky T, Segecova V, Rubín L, et al. Do physical activity interventions combining self-monitoring with other components provide an additional benefit? Br J Sports Med. 2022;56:771-779.
[5] Smith GL, Banting L, Eime R, et al. The association between social support and physical activity in older adults: a systematic review. Int J Behav Nutr Phys Act. 2017;14:56.
[6] Kompf J. Disrupting unhealthy habits with environmental modifications. NSCA Personal Training Quarterly 3.3 (2019): 18-20.
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>やる気に頼らず運動を続けるための考え方</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">運動を続けるには、ただ「やる気」に頼るのではなく、環境や行動の仕組みを整えることが大切です。<br />
最新の研究では、目標の立て方や行動のきっかけづくり、少しの運動でも毎日続ける工夫、記録とフィードバック、仲間のサポート、運動しやすい環境づくり、そして前向きなセルフトークなどが有効とされています。以下ではこれらのポイントをそれぞれ解説します。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>1. SMART目標を「柔らかく」使う</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">「SMART目標」とは、<br />
Specific(具体的)、<br />
Measurable(測定可能)、<br />
Achievable(達成可能)、<br />
Relevant(意義がある)、<br />
Time-bound(期限付き)<br />
の5つの条件を満たす目標設定法です。<br />
たとえば「来月までに週に3回、30分間ウォーキングする」といった具体的な目標は、取り組みやすく、進捗が確認しやすくなります。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">ただし、最新のレビューによると、この方法を過度に機械的に使うことは逆効果になる場合もあるとされています。<br />
というのも、SMART目標では動機づけの「理由」や感情、柔軟性が十分に考慮されにくく、「目標を守らなければ」というプレッシャーが挫折につながることもあるからです[1]。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">そのため、SMART目標はあくまで補助ツールとし、「なぜ運動するのか」という自分なりの意義を忘れないようにしましょう。<br />
「なぜ運動するのか」については前回の日記をぜひ参照してください。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>2. 行動の“トリガー”を設定する</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">新しい運動を日常の習慣にするには、すでに日々行っている行動と結びつける「トリガー設定」がとても効果的です。<br />
たとえば「朝起きたらストレッチをする」「歯磨きの後にスクワットを10回する」といったように、毎日欠かさず行う行動に運動を“くっつける”ことで、無意識に体が動くようになります。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">ある研究では、「運動を始める合図(instigation habit)」の習慣が、実際の運動頻度を最もよく予測する要因だったと報告されています。つまり「どんな運動をするか」よりも「いつ始めるか」が重要だということです[2]。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>3. “ちょっとだけ運動”を許可する</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">運動を習慣化するうえで、完璧主義は大敵です。<br />
やる気が出ない日でも「1分だけやってみる」「ストレッチだけでもOK」といった“ミニマム行動”に切り替えることで、習慣の連続性を保てます。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">実際、心理学の研究では、運動の難易度や時間を一時的に下げる(=要求量の削減)ことで、行動の開始率が大きく向上することが示されています[3]。<br />
このような「最低限のルール」を持つことで、「今日は無理だからゼロ」という事態を減らすことができます。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>4. 運動を記録して“見える化”する</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">自分の行動を記録する「セルフモニタリング」は、習慣化にとって非常に有効です。<br />
たとえばアプリで歩数や運動時間を可視化することで、「やった感」を感じやすくなり、達成感や継続意欲が高まります。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">あるメタ分析では、自己記録を取り入れたグループは、対照群よりも1日あたり約900歩多く歩くようになったと報告されています[4]。<br />
記録の方法は何でも構いません。ノートに書くだけでもOKです。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>5. “一緒に頑張る人”をつくる</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">仲間や家族とのつながりは、運動継続において強力な支えになります。<br />
実際、多くの研究で、社会的サポートがある人は運動習慣を維持しやすいことが確認されています。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">特に、家族やパートナーの応援、友人との共同行動、SNSでの成果報告などはモチベーション維持に効果的です[5]。<br />
「一緒に頑張っている人がいる」という感覚が、孤独や面倒くささを和らげてくれます。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>6. “運動したくなる”環境づくり</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">環境を変えることで習慣は自然と変わります。たとえば部屋の見える場所にヨガマットやダンベルを置いたり、通勤時に階段を使いやすい靴を履いたりするなど、「運動しやすい仕組み」を整えるのがポイントです。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">ある研究では、生活空間に運動ツールを設置するだけでも、行動の頻度が増える傾向があると示されています[6]。また「テレビを見るなら、エアロバイクに乗りながら」など、日常の習慣とセットにするのも有効です。<br />
僕の場合は夕方5時になったらリマインダーが通知されるように、スケジュールアプリで設定しています。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>7. 自分を励ます“ポジティブセルフトーク”</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">運動中はつらさや面倒な気持ちが湧いてくるものです。<br />
そんなときは「自分はやれる」「終わったらスッキリする」といったポジティブな言葉を自分にかける「セルフトーク」が助けになります。</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">こうした前向きな思考を繰り返すことで、「運動する自分」というセルフイメージが強化され、やる気に頼らず行動が安定するようになります。<br />
心と体の両方から習慣づくりを支える、意外と重要なスキルです。</span></p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>まとめ:習慣化のカギは「仕組み」と「工夫」</strong></span></p>
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<p>運動を習慣にすることは、正直、最初は誰にとっても難しいものです。始めたばかりの頃は、「今日もやらなきゃいけないのか」「めんどくさいな」と思うことの連続でした。僕自身もそうでした。やろうと決めても、気分が乗らない日があって、続かないことに自己嫌悪を感じたこともあります。</p>
<p>でも、それでも何度も「とりあえずちょっとだけやろう」と、気が進まないまま体を動かしているうちに、不思議とだんだんと習慣になっていきました。完璧じゃなくていい、1日5分でも、少し動けばOK。そう思えるようになると、心が楽になって、むしろ続けることが楽しくなっていったんです。</p>
<p>また、プロ野球選手のダルビッシュ有さんの言葉にも、とても励まされました。彼は「継続とは毎日やることじゃない。たとえ途切れても、しばらく経ってまた再開すれば、それも継続だ」と語っています。この考え方に救われました。途中で休んでしまっても、また戻ってこれば、それでいい。そう思えるようになってから、筋トレも自然と長く続くようになりました。</p>
<p>最初から完璧を目指さなくてもいい。少しずつ、自分にとって無理のないやり方で続けていくことこそが、本当の意味での「継続」なのだと思います。今日できなかったとしても、明日また始めれば、それで十分です。自分を責めず、優しく、前向きに続けていきましょう。</p>
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<p><span style="font-size:10.5pt"><strong>参考文献</strong></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">[1] Swann C, Jackman PC, Lawrence A, et al. <em>The (over)use of SMART goals for physical activity promotion: A narrative review and critique</em>. Health Psychol Rev. 2023;17(2):211-226.</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">[2] Phillips LA, Gardner B. <em>Habitual exercise instigation (vs. execution) predicts healthy adults’ exercise frequency</em>. Health Psychol. 2016;35(1):69-77.</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">[3] Gamwell A. <em>The 1 Mistake When Forming an Exercise Routine</em>. Psychology Today, 2022年12月.</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">[4] Vetrovsky T, Segecova V, Rubín L, et al. <em>Do physical activity interventions combining self-monitoring with other components provide an additional benefit?</em> Br J Sports Med. 2022;56:771-779.</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">[5] Smith GL, Banting L, Eime R, et al. <em>The association between social support and physical activity in older adults: a systematic review</em>. Int J Behav Nutr Phys Act. 2017;14:56.</span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt">[6] Kompf J. <em>Disrupting unhealthy habits with environmental modifications</em>. NSCA Personal Training Quarterly 3.3 (2019): 18-20.</span></p>
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