「壊れたんだけど」
携帯ショップのカウンターに案内された男性が開口一番そう言って、ポケットから取り出した携帯電話をカウンターの上に投げ出した。
「いや、そんな扱い方したら壊れて当然だろ!」
隣のカウンターで聞いていた私は盛大にズッコケた。
物の取り扱いは、知識と想像力が問われる。
何の素材を
どのうように組み合わせて
どんな形をしているのか
それによって強度はいくらでも変わってくる。
精密機器なら衝撃を与えるべきではないことは、ちょっと考えれば予想できる。
また、品物に込められた想いは取り扱いに影響を与える。
大切な思い出の品を振り回したり投げつけたりする人はいない。
きっと、大切にされてないんだろうな。
ぞんざいに投げ出された携帯電話のことを思うと、今でも心が痛む。
何かに触れる時には、思いが伝わるもの。
最も繊細なものに触れる仕事に就いた今、忘れないようにしたい。