高3の夏、
私立の進学校に入ってしまった僕には、
勉強という2文字しか、
選択肢が与えられてはいなかった。
部活もバイトも禁止。
朝は7時に登校し、自習を義務付けられ、
夕方6時半までつまらない授業が続く。
そして、
夕飯を食べ、夜の7時半から9時半まで
予備校に通う生活……。
私立文系に的を絞った僕は、
僕の中では日本一楽しそうだし
トップだと思ってた、
早稲田大学合格を目標に掲げた。
明くる日も明くる日も、
ひたすらひたすら勉強した。
ノートに、英単語をびっしり書きまくり、
そのノートは増えていき、
右手は、ちょくちょく腱鞘炎になった。
今思えば、
大失敗な勉強法である。
書くことで陶酔し、
時間と労力ばかりを奪い、
結局は暗記しきれてなかったりする。
問題演習で間違えるのを恐れて、
暗記作業に逃げる。
けど、
問題演習がテストに出るわけだから、
全く
太刀打ち出来ない。
本当に不器用な勉強方法をしていた。
大人になってから、
家庭教師をし、
自分とは真逆の勉強方法を子供達に勧めたら、
僕の生徒は、
あっという間に偏差値を暴上げし、
いとも簡単に東大に合格していった。
そこの役にはたてたけど、
それだけの残念な青春時代を送ってしまった。
とうとう12月に差し掛かる頃、
僕は崩壊寸前になってた。
偏差値が上がらない。
焦りと不安……。
そして、
孤独感に打ちひしがられそうだった。
そんな日に、
たまたま中学の友達に駅で会った。
中学の時、
ピアノが弾ける僕は、
学園祭で全校生徒の前で歌を歌ったり
していた。
その時に一緒に発表してた、
他校に行った友達だった。
「おう?なーにしてんのー?顔色悪っ笑」
っと、彼は話しかけてきた。
「今から予備校なんよ。
そっちこそ、ギター持ってなんなん?笑」
と、返した。
そう、
彼は、当時夏色で大ブレークした、
「ゆず」に影響され、
ストリートミュージシャンとして、
駅で歌おうとしていたのだ……。
「ねえ、お前の歌聞きてえわ」
彼は笑いながら言ってきた。
「いやいや、はずいし、しばらく歌ってないよ」
「たのむ!一曲だけやるべ!」
僕は勇気がなかったけど、
ただ、
壊れかけのレディオな日々。
久々に、人と話せてることに、
なんか嬉しさが込み上げていた。
「よっしゃ!歌う!予備校なんか、いかね!」
彼は、夏色の前奏をもう弾き始めた。
「駐車場の猫は~、あくびをしながら~」
僕は、笑ってた。
気付いたら、全力で歌ってる自分がいた。
次第に人だかりができはじめ、
30人位の方々が、僕らを笑顔で見つめ、
一緒に首を降った。
これが、
僕の人生を大きく変える瞬間だったことを、
僕はその時はわからなかった。
ただ、
楽しかった。
自分が歌が好きだって知った瞬間だった。
30人位の群衆の中に、
一人、
犬を連れた、
綺麗なお姉さんがいた。
彼女がまた自分の運命を左右することを、
僕は知らなかった……。
~第二章へ続く~
みっきーの写メ日記
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みっきー物語 ~第1章~みっきー